養育費について【公正証書】

  • 2018/4/10

目次
■公正証書とは
■公正証書作成の仕方
■行政書士・司法書士・弁護士などのプロに頼むべき?
■公正証書を作成するには、どのくらいお金がかかるの?
■公正証書を作成しても、強制執行(差し押さえ)ができないケースも?
■公正証書作成の流れ
■相手方が、公正証書作成に応じてくれない場合
 

公正証書とは

公正証書が作成した、法律行為や権利についての証書のことを言います。
離婚にまつわる取り決めについて作成したものについては、離婚公正証書とも呼ばれます。
万が一、支払い義務者からの振込みがとどこおった時などに、調停や裁判をすることなくすみやかに相手の財産を差し押さえるなどの強制執行と同レベルの効力を持っています。

■協議離婚書との違いって?
離婚の際に話し合いで離婚が成立する夫婦は、全体の割合でも9割を占めています。養育費や慰謝料について、協議離婚書に残しているからと安心している方も多いのではないでしょうか。
けれど、離婚協議書には、公正証書ほどの効力がありません。
養育費の支払いがとどこおった時のことを考えると、協議離婚書を公正証書として残しておくと安心ですね。
(協議離婚書を公正証書にする場合、ある条件を満たしていないと、強制執行ができないことも。
「■公正証書を作成しても、強制執行(差し押さえ)ができないケースも?」もぜひ参考にしてください。)

公正証書作成の仕方

公正証書作成には、いくらかかるの?
公証役場で公正証書を作成するための手数料は、下記の総額になります。

■公正証書作成手数料(表1参照)
養育費や慰謝料の総額によります。

■公正証書の発行枚数、謄本代(数千円程度)
公正証書は1枚作ればいいというものではなく、原本・正本・謄本の計3部が作られます。一般的に原本は公証役場に保管し、正本は債権者へ、そして謄本は債務者用になります。

■送達手数料(数千円程度)
夫婦そろって公正証書を作成した場合、その場で送達証明書の交付が受けられます。もし債務者が当日出頭せず、代理人で証書を作成した場合は、債務者の現住所を確認できるものを用意し、送達申込書を公証人役場に提出することで、公正証書を後日自宅に送ってもらうことが可能です。
公正証書は特別郵便という郵便で配送されるので、発送手数料がかかります。
http://www.chibachuo-notary.com/kyouseisikkou.html

公証役場での公正証書作成手数料は、数千円から3万円近くになることも。
養育費の総額や慰謝料の金額により、手数料が変わります。
養育費は月額で支払われるのが一般的ですが、総額の出し方は、10年分を上限として計算されます。

■例えば、「お子さんが1人、養育費の月額が5万円、支払期間が12年」と「慰謝料200万円」の場合で見て行きましょう。
養育費の総額が5万円×12か月×10年間(10年以上の支払期間でも、10年を上限として切り捨てて計算します)=600万円の手数料……17,000円。
慰謝料200万円の手数料……7,000円。
養育費の手数料17,000円+慰謝料の手数料17,000円=24,000円となります。

※慰謝料と養育費を合算してから、手数料をしがちですが、実際は「慰謝料・財産分与」と「養育料」とは別の法律行為として扱われるため、それぞれの手数料を算出してから合算する形になります。

行政書士・司法書士・弁護士などのプロに頼むべき?

公正証書の作成は、素人には難しいものです。
ここでは、プロに依頼するメリットをあげてみましょう。

 
■ミスのない公正証書が作成できる
公正証書とはいえ、必要な文言が抜けていると強制執行ができないことも。
プロに依頼することで法的効力のあるものを作成できます。

■相手が話し合いに応じてくれない。
夫婦で養育費など、離婚の取り決めができる時は行政書士に依頼をしたり、夫婦で公証役場におもむいて、公証人に相談しながら作成することができます。
しかし条件がかみ合わず、話し合いに応じてもらえないことも。
調停を申し立てて、公正証書と同等以上の効力を発する離婚調書を作成する方法もありますが、弁護士に依頼するのも一つの手です。
公正証書作成の手数料以外に、相手との交渉には別途料金がかかります。法テラスを利用できる弁護士事務所なら、月々数千円から数万円の分割で申し込むことができます。

公正証書を作成するには、どのくらいお金がかかるの?

公正証書作成代行費用は、2万〜4万円の価格帯が35.4%と最も多く、次に4〜6万円の価格帯が32.7%にもなります。
ネットで養育費についての公正証書作成の手数料を公開している行政書士事務所では、およそ5万円代の金額設定が多いようです。

■平成27年度報酬額統計調査の結果
https://www.gyosei.or.jp/about/disclosure/reward.html
 
■離婚協議書作成
https://www.gyosei.or.jp/wp-content/uploads/2016/03/12ad4f65cba6f63c3518bf14b58fdd64.pdf

行政書士さんによる養育費公正証書代行手数料を約5万円として、公証役場で公正証書作成手数料を5千円から3万円。そして、公正証書の発行枚数分の手数料と送達手数料も合わせると、ざっと見積もっても10万円近くかかる計算になりますね。
「まずは自分でなんとかしたい!」
という方には公証役場で無料で相談も行っています。(あくまで公正証書の作成方法のみにまつわる相談となります。)
公証役場一覧http://www.koshonin.gr.jp/list/

公正証書を作成しても、強制執行(差し押さえ)ができないケースも?

大切な時間とお金をかけて、作成するものです。
この3点には特に注意しましょう。

 
■公正証書正本があること
“公正証書正本とは,債権者と債務者が合意した内容を公証人が書面にしたもので,「これは正本である。」という公証人の認証が入っているものです。
 給料の差押えをするためには,公正証書正本に,債務者が公正証書正本に記載された債務を履行しない場合は,直ちに強制執行に服する旨(これを「執行受諾文言」といいます。)が記載されていなければなりません。”
引用:http://www.courts.go.jp/okayama/saiban/tetuzuki/y7/

■執行文と執行受諾文言が記載されていること
「債権者は,債務者に対し,この公正証書によって強制執行をすることができる。」という文言の「執行文」と、それを了承する執行受諾文言が記載されていないと、強制執行ができません。

■送達証明があること
相手方に公正証書正本または公正証書謄本が届いているかを証明する文書です。
たとえ債務者が公正証書正本または公正証書謄本を所持していたとしても、これがないと強制執行ができません。http://www.chibachuo-notary.com/kyouseisikkou.html

公正証書作成の流れ

それでは、実際に公正証書を作成する手順を見て行きましょう。

1.夫婦で養育費などの取り決めをする。
2.離婚構成証書原案を作成する。
3.事前に公証役場に予約をする。
予約なしで当日に出向いても、公証人に対応してもらえません。まずは電話で予約をしましょう。
実際に予約が取れる日は、1週間から3週間ほど先が一般的です。
4.公証役場で公証人に原案を確認してもらう。
5.公正証書作成に必要なものを集める
6.公証役場で公正証書を作成する。
7.交付送達の手続きをする。

ここで大事なのは、公正証書を作成した後、交付送達の手続きをするということです。
支払いがとどこおり、強制執行をする際に、相手方が公正証書の正本を受け取ったという「送達証明書」が必要です。
後から郵便にて送達してもらうことも出来ますが、新たに手数料などがかかります。また、代理人が郵便で交付送達を依頼する場合、債務者の現住所が確認できるものが必要となるなど、手間がかかります。

公正証書を作成した時に、債務者本人に交付送達をしてもらいましょう。
http://rikonnsitai.iinaa.net/kouseishoushokyouseisikkou.html

相手方が、公正証書作成に応じてくれない場合

公正証書は、夫婦の合意がないと作成できません。

相手方が承諾してくれない理由は、
「離婚に迷いがある、離婚したくない」
「養育費を継続して払うことに不安や抵抗がある」
など、さまざまな理由があげられます。

調停を申し立てることにより、養育費について取り決めをしましょう。

そこで夫婦の合意があり調停が成立した場合、取り決められた内容は調停調書として記録されます。調停調書は、公正証書と同等以上の強制執行の効力があります。

調停での話し合いは、家庭裁判所の空き状況や、調停員、夫婦などのスケジュールにもよりますが、月に1回程度で、少しずつ話し合いを進めて行きます。
時間がかかるものですが、弁護士に依頼をしない場合、公正証書の作成よりも安価です。(一般的に約数千円)

離婚にまつわる話し合いの中でも養育費の取り決めは、スムーズに行かないものですが、手立ては色々あります。
相手の反応に応じて、対策を変えましょう。

 

 
   

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